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図5−10 キノンを利用した光−プロトンエネルギー変換分子

(2) メカニカルイオンポンプ
生体内のエネルギーは水素イオン(プロトン)の流れによって生み出されている。エレクトロンに代わるプロトンエネルギーは、化学エネルギーとして蓄えられる。従って物質としてエネルギーの蓄積が可能であり、輸送およびエネルギー変換時に各種のエネルギー損失を大幅に低減させることが可能なエネルギーとなる。水素イオンエネルギーはATPとして蓄積され、この化学反応によって機械的エネルギー、光、音などあらゆる仕事に変換されることである。すなわち、電気に相当するのがATPというエネルギー物質であり、電気が物質でないために輸送あるいはエネルギー変換時に各種のエネルギー損失を受けるのに対し、大幅に損失を避けることが可能となっている。また、一次エネルギーが、細胞膜を隔てた水素イオン濃度差なので、発電機による燃焼エネルギーの変換時に制約となる、熱力学的限界(効率=(T1−T2)/T1、T1は高熱源の温度、T2は低熱源の温度)が存在しない。
電子の発見以来約50年でエレクトロニクス分野の顕著な進歩がみられた。50年というスパンを考えた場合、水素イオンエネルギーは、21世紀のエネルギー分野におけるブレークスルーを引き起こす発見と考えてはいけないだろうか。
鞭毛モーターに見られる、駆動原理を学んで、将来エレクトロンではなく、プロトンの流れにより駆動するモーター、あるいは逆に外部から加えたローターの回転力(力学的なエネルギー)を効率的に利用して膜を隔てたプロトンの濃度勾配

 

 

 

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